Jazz Japan Vol.14掲載のクニ三上インタビュー記事で、原文の一部分が何故か削除され、誤解を招きかねない内容に変わってしまった部分がありました。Office Yokotaでは、三上の認識や意図とは異なってしまった内容について、Jazz Japanに対し、訂正記事掲載を申し入れましたが、受け入れてもらうことはできませんでした。
現実的に、過去のインタビュー記事について、訂正記事を掲載するのが難しいことは理解できますし、字数制限など編集の都合で内容に問題がない限りの削除はありえると思います。しかしながら、今回の削除は、言及しているライオネル・ハンプトンに対する認識そのものを歪めかねない内容のものであり、ハンプトン氏に対して大変失礼であると感じます。さらに、三上が、ハンプトンに対して誤った認識を持っているかのように誤解されかねない内容ともなってしまいました。また、校正やOffice Yokotaへの事前の確認のないまま重要な部分が削除された文章が掲載されたことについても、非常に残念に感じています。
そこで、日頃から三上を応援してくださってHPを訪れてくださる方、今回初めてであれ興味を持ってHPを訪れてくださった方に、せめて、原文を読んで頂きたく、ここにインタビューの全文を掲載しますので、ぜひお読み頂ければと思います。赤字で記した部分が、不本意に削除された部分です。
尚、この文章及び内容については、決してJazz Japanを批判するものではないことと、この内容はOffice Yokotaが責任を持ってここに掲載することを、一言付け加えさせて頂きます。この内容について、ご意見、ご感想等がございましたら、どうぞ kunimikami,officeyokota.net までお寄せください。
1.今、なぜライオネル・ハンプトンに捧げるアルバムを製作されたのでしょうか?
NYでもブルーノートなどで機会のあるたびにライオネルハンプトンの仲間を中心に、トリオに2管を加えた5人の編成でビッグバンドのサウンドが出るようアレンジをしてスイングする曲を演奏をしてきていました。来年はハンプトンが亡くなって10年目ですので、私にとって親のような存在だった彼への感謝の意も含めてCDを作りたく思っていました。ところが、一緒に録音しようと約束していた、ハンプトン楽団での相棒だったドラムのゲーター・ワトソン氏が60歳に満たない昨年末、突然亡くなったこともあって、「これは、のんびりしていられないな」と思い今年の4月に録音しました。
2.日本ではライオネル・ハンプトンは、それほど著名ではありませんが、米国や欧州では「ハンプトンは、どういう位置づけ」なのでしょうか?
ハンプトン氏は優れた音楽家であると同時に、公民権運動や黒人の社会的地位向上の為にも貢献した人です。教育や政治に多大な寄付をしています。その寄付で作られ、彼の名前を冠した公共住宅や音楽学校があります。これは日々の糧を得るのに精一杯の通常のジャズ・ミュージシャンには、あまり見られない事です。彼は特に共和党との結びつきが大きかったので、リーガンやブッシュなどと個人的な付き合いもあり、ホワイトハウスに招かれてたびたび演奏しています。ところが民主党のクリントンを応援したり、進歩的な団体への献金もしたり、「マイノリティ向上の為なら左右を問わない」と融通の利く対応をする人でした。著名な音楽家であり慈善家・活動家でもある、という位置づけです。
3.クニさんが在籍された1991年~2002年は、ハンプトンが83歳~94歳でした。間近で接された「ハンプトンの魅力」をお聞かせください。
ステージでのパワーが強烈でしたね。毎回、生命力がほとばしる演奏でした。ツアーが長く続く場合でも、毎晩、全力でやって、手を抜きませんでした。80代後半まではドラムも叩くし、私の横に座ってピアノを連弾したり、とお客さんを楽しませる演奏に徹底していました。若い頃はワンマンで恐いリーダーだったとの話ですが、私の参加していた頃は、とても良い紳士でした。「クニはスイング感が良いよ」とのハンプトンの言葉は私の演奏活動での大きな支えとなってくれました。まあ、でもドラマーには厳しい人でした、「余計な技は使わず2拍と4拍を強調するドラム演奏」を求めていましたし、少しでもそれからはずれると、演奏中でも、後ろを向いてドラマーを睨んでいましたが、お客さんの方向には笑顔しか見せませんでしたね。80歳なってもカツラをつけていたダンディズムにも感心しました。
4.『ハンプス・ブギ』は、クニさんのリーダー作として何作目でしょうか?
11作目です。
5.収録曲は往年の名曲ばかりですが、アレンジはどうされたのでしょうか?原曲のアレンジに近い感じでされていますか?ピアノの弾き方を普段と変えていますか?(曲にもよると思いますが)
参加したミュージシャンが長年、在籍した楽団の曲を演奏したので、彼らはアレンジを身体で覚えていましたから、楽譜はソロの順番等の簡単な譜面を用意しただけです。ドラマーのデイブ・ギブソンはベイシー楽団でやっていたので、あの楽団特有の粘りとアクセントや強弱を完璧に演奏できますし、テナー・サックスのマイク・ハシムはハンプトン楽団で一声を風靡したイリノイ・ジャケットのフライング・ホームのソロを全部覚えていて、このCDで演奏しています。トロンボーンのクラランス・バンクスは、ベイシー楽団とハンプトン楽団を掛け持ちしていたので、両楽団のアレンジを覚えています。要するに、楽譜を読む演奏ではなく、楽譜無しのコンボに近い演奏形態で、各ビッグバンドで演奏されている正統のアレンジを演奏したCDなんです。私もエリントン楽団の体験で学んだ音数の少ない演奏と、ハンプトン楽団の豪快な和音構成、という2種類の演奏方法を行っています。
6.録音にあたり、参加メンバーに、「こうしたい!」と伝えたことは何でしょうか?
いつもハンプトンやエリントン楽団でやっているアレンジでやるよ、と言ったら全員が笑顔でうなずいてくれました。
7.「リスナーに味わって欲しい」と思われる「聴きどころ」を教えてください。
このCDを聴いて、身体が動き出さない場合はお医者さんに診てもらってください。運転中に聴くと 曲に合わせて、スピードを出しすぎるので危険です。
8.「9245レーベル」の第1弾ですが、92はクニさんのこと、45は横田さんのことを表されているのでしょうか?
ご名答!
9.完成されたアルバムをご自身で聴かれた感想を教えてください。 また気に入っている曲を教えてください。
ありきたりの答えですが、全曲が気に入っていますし、録音したうちで、気に入った曲だけをCDに入れました。